棄てた君
前話「奪われたお前」
次に会った時、君を殺す――。
そう言ってノイエンがここを去り、一体どのくらいの月日が経っただろうか。
はじめは彼を探して近くの町まで出たことはあった。しかし、彼はまるではじめから存在すらしなかったかのように、何の痕跡も残さず消えてしまっていたのだ。
寂しかった。
戻ってきて、と何度泣いたか分からない。
それでも彼が帰ってくることはなかったし、私の日常が変わることもなかった。
何も、しなければならないことはなく、愛しい人もいない中で、ただただ無為に過ぎていく日々。
知識を得ること。それだけを
「ノイエン、あなたはいずれ、帰ってくるのでしょう……?」
彼は「次に会った時」と、そう言った。
彼は私をどこかで憎んでいたのかもしれない。だから「殺す」と言ったのかもしれない。
そう思いもした。殺されるのは怖い。
でも――
「あなたがいつか、会いに来てくれるなら、私は……」
自死を選ぶことも出来ない。
臆病な心を抱えたまま、私はただ待つのだ。
「此度の旅人は、随分お早い到着だこと――」
いつか来たる、あなたの訪れを。
関連作