デンドロビウムの純情
序章少女の思い
いったい、いつから彼の事が好きだったのだろう。
煌めく大きなホールの明かりを背に、少女は思う。
大勢の人々がひしめきあうホールの喧騒からは遠ざかり、彼女の周囲はただ静かだった。
少女は欄干に身体を預け、目を閉じる。
幼い頃見上げたあの背中、自分をずっと優しく見守ってくれていたあの瞳に、恋をしたのだ。
今なら、疑いなくそう思う。
「―――」
少女はその声に瞼を上げた。
そして、その声の主の方へと振り返って、ふわりと微笑んだ。
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