きっと誰かが連れ出してくれるまで
――おまえは、世界に愛された娘だよ。
それがお父様の口癖だった。
「さあ、愛する我が娘。こちらへおいで」
「はい、お父様」
腕を引かれ、抱きすくめられ――、薄い絹越しに「お父様」の存在を感じる。
にっこり微笑んで、そして、目を閉じた。
わたしの魂はどこか遠いところへ飛んでゆく。
「ルミリア……――」
お母様の名を呼ぶお父様の声も、もう「わたし」には聞こえない。
あとはただ従順に、求められるまま舞い踊れば夜が明ける。
そうすればまた、わたしは「世界に愛される娘」に戻れるの――。
お題「無害」
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