君の呼び声
「――、――ッ!!」
遠い所で声が聞こえる気がした。
霞む。反響する。まるで水の中のように、その声は不明瞭だ。
「……、」
けれど、わたしにはわかる。
これは、彼がわたしの名を呼ぶ声だ。
ああ……。この声に応えることができたら良いのに。
そう思うのに、わたしの唇はもう、微かにさえ動いてはくれない。
手先が――指先が、急速に冷えていく。
どうか泣かないで、愛しい人。
わたしはこの大地へ、空へ、空気へ、星へ――、還るだけなのだから。
お題「帰る」
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